グローバル化


グローバル化 - 問題点

今日の貿易システムは関税や助成金、成長率の最大化などによって貿易による経済的阻害を最小限に抑えることが原則とされています。このシステムの元では経済成長や消費の増加が見られ、どんな犠牲を払ってもこの成長を追及することができます。しかし、この野放し状態で規制のないの成長は世界経済が拠点としている自然資源を本来持ち合わせている資源の再生速度よりもはるかに早いスピードで激減させます。

WTO・IMF・世界銀行やこれらの機関が出資しているプロジェクトが掲げる目標には大きな矛盾があります。これらの機関は貧困や倫理、環境保全などの問題に口先だけの目標を掲げているにもかかわらず、これらの問題に対しての活動をほとんど行っていません。

これらの貿易機関や企業、ロビー団体の本当の目的は世界中の各国経済における商業化、民営化、自由化なのです。

環境条約

今日の貿易システムは非道で不公平な上に環境を破壊しています。

近年WTOの仲介によって制定されたいくつもの協定が大企業や先進国が有利に働くという異常な傾向が見られています。具体的な例としてWTO農業協定と貿易関連知的所有権に関する協定(TRIPs協定)が挙げられます。

生物多様性に関する製品の取引を規制し、絶滅の恐れがある生物やそれらの生息地を保護し、有害廃棄物質の国際間の移動を管理するような環境に関する多国間における協定はいくつもの貿易協定によってその効果を失いつつあります。(これらの環境協定は、モントリオール議定書、絶滅のおそれのある野生動物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)、生物の多様性に関する条約、有害物質、国際的な有害廃棄物の取引、有害廃棄物の越境移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約(バーゼル条約)などを含みます。)

自由貿易経済が持つもう一つの問題はシステムが単純すぎることです。多くの自由貿易支持者は経済は物理学や生物学や自然の原則によって動き、経済を操作することによって人類全体に富をもたらすと考えています。18世紀以来自由貿易の原理はほとんどが宗教的な信仰に基づいて作られています。なぜなら自由貿易は一般的に効果的で良いものと考えられているからです。経済専門家による自由貿易の考案は人類の文化の破壊を生み出しました。

これら支持者は自由貿易による規制緩和は発展途上諸国における貧困層を救うと主張しています。自由化の進行によって得られた富は上流階級層から貧困層まで潤すというのが彼らの考え方です。この考え方はトリクルダウン[通貨浸透]効果と呼ばれています。自由貿易は増え続けていますが、この貿易を通じて利益を上げているのはきわめて一部のほとんどが先進国の人々に限られており、貧困層の人々の生活はさらに厳しくなってきています。

自由貿易において資源を使い果たしてでも断続的な経済成長が重要だということが当然のこととみなされています。

統計

越境国際取引は1990年の3兆ドルから2007年には10兆ドルまで成長し、2025年までには70兆ドルを越えるといわれています。この取引のうち84%は商品で16%はサービスの取引です。国際取引上のうちおおよそ75%の商品は運送機、機械、電子機器などの製造品です。22%は鉱物や農産物で、発展途上国にとっての主な収益源となっています。そして、国際取引全体の約40%が多国籍企業を通じて行われています。

巨大な多国籍企業は非常に強力で、中には発展途上国以上の売り上げを上げている企業もあります。世界上位350の多国籍企業の売り上げの合計額は世界中の全ての先進国におけるGNP(国民総生産)の合計に達し、途上国各国のGNPを上回ります。世界でもっとも貧しい48カ国(世界の4分の1)のGDP(国内総生産)は世界でもっとも裕福な3人の財産の合計よりも少ないのです。2007年には世界人口の約0.13%が世界の資産の25%を掌握しているという資産の所有における極度の不一致が見られています。

1960年、世界で最も裕福な国々に住む世界人口の20%は、世界でもっとも貧しい国々に住む世界人口の20%よりも30倍裕福でした。1997年までにその差は74倍に広がりました。1975年から1997年までに最先進国のGDPは50%増加し、最後進国のGDPは15%減少しました。(United Nations Development Program Figures 1999より)

自由経済や経済合理主義が導入されて50年。貧困問題は深刻化続けより多くの人が貧困や、空腹、病気によって苦しめられており、貧困層を取り巻く環境は悪化の一途をたどっているといえます。裕福な人々はより裕福に貧しい人々はより貧しくなり、貧富の差は広がると同時に全ての人の生活の質は低下しています。

運送と環境

貿易システムは消費を促進させます。そしてそれは時に野生動物の生息地、生物多様性や世界経済が依存している自然資源の消失を伴います。貿易が増加すれば交通量が増加します。交通量が増加すれば道路が増え、騒音、大気汚染も増加します。国際間における交通量の増加も多くの問題を作り出ています。船のバラスト(船を安定させるために船底に積む重し)などを通じて外来種が外国から持ち込まれています。外来種の進入は現地の敏感な生態系を破壊しかねません。

市場経済学者の一説によると(市場における)競争によるメリットは、各国が最も得意とする製品のみを専門に製造することができることにあるといいます。しかし、この考え方は多くの環境保護論者の論点に反しています。なぜなら多くを現地で生産することによって、余分な運送費を削減することができるからです。

生態系が公害に対応できる量とスピードに限度があります、同時に貿易や産業化や成長にも限界があります。

経済成長は限りある資源から産出された材木を作り出し、世界中の熱帯雨林の多くを消滅させました。海洋資源は漁業によって過剰に利用されてきたため魚の貯蔵量の深刻な減少が見られています。

WTOの規約には(環境破壊)予防のための原則がありません。WTO自由貿易規約はヨーロッパ諸国にホルモン牛肉を輸入させ、カメなどの野生動物を傷つけない特別な魚網によって捕獲されたエビの輸入を妨げてきました。

ラベル表示

環境や社会にやさしい商品を他の商品と区別させるためにラベルをはり付ける動向が20年以上前から進んでいます。しかしWTOはこのようなラベル表示を「貿易を阻害するもの」として違法としています。これらに含まれるものは有機食品、持続可能な資源から産出された木材、適正な賃金を受け取った人々によって製造された商品などです。

民主主義

WTOは民主主義の精神に基づいた機関ではありません。この機関は大企業を代理する強力な西洋の政府によって支配されています。このWTOによる影響によって数十万ドルという資金が大企業から「寄付」という形で政治家たちに流されます。この「寄付」によって企業は重要な交渉者(政治家)との会議を開く権利を得るのです。

WTO透明性は低く、説明責任を十分に果たしていません。

大企業が経済・社会・環境における支配を広げている一方、民主主義は弱体化の一途をたどっています。

WTOは一国一票制を導入していますが、強力な国々や多くの資金を所有する企業が最も大きな影響力を持っています。強力な国々は貧しい国々の政府の協議事項を誘導したいていは決定させるのです。

WTOの活動に関する情報の公共への公開は限られています。政府関係者でさえも問い合わせに対しての回答を得ることができません。もちろん、一般人の参加は許可されていません。

格差

各国政府はWTOにWTOよって決定された貿易に関する法律の変更点を確認することを義務づけています。一度そのWTOによる国際法が施行された場合、その法律自体が各国独自の貿易法に完全に反していたとしても各国はその国際法に従わなくてはなりません。

(WTO内の)委員間の論争は WTOの紛争解決機関(Dispute Settlement Body:DSB)の仲介によって解決されています。

WTOは世界中の貧困レベルを上昇させ、ごく少数の富裕層をさらに裕福にし、 国と国との格差を広げ、持続不可能な消費と生産の市場を作り出しました。

競争

近年、ごくわずかな大企業が国際的に大きな力を持つ傾向にあります。多国籍企業は小規模の会社とますます吸収、合併しています。この独占資本主義は消費者や環境に悪影響を与えます。なぜなら独占資本主義は権限主義(又は独裁主義)を増加させ市場競争を縮小させるからです。大企業はコストを最大限に抑えるため小規模の企業はもはや大企業と張り合うことはできません。さらに大企業は価格を下げることも可能にします。したがって小さな企業は大企業によっては行き場を失っているのです。

投機・投資

近年の貿易規制の改定に伴って金融市場における投資部門の規制緩和が実施されました。これによってより高額な資金が短期間に取引されるようになり発展途上国における経済安定性が危ぶまれています。投機家や投資家はこれまで以上に頻繁な投下資本の回収が可能となり世界経済に打撃を与えています。これにより、いくつもの東南アジアの国々が経済危機に陥り、これらの国々に住む貧困に苦しむ人々を増加させました。例えばマレーシアでは1997年に国外への大規模な資本流出が相次ぎ、当国の株式市場における株価がたった6ヶ月の間に40%も減少しました。

この投機的な投資によって生み出された浮き沈みの激しい経済システムにおいて持続可能な発展は望めません。

労働法

資本や企業の国際的な流動性の上昇は企業を労働規制の少なくかつ賃金の安い国へ移動させました。

第三国の農業経営者

多くの小規模農場経営者は不毛な土地と厳しい気候条件の中での経営を余儀なくされています。自由貿易の原則において彼らのための同情はありません。貿易自由化において小規模農場に対しての補助はほとんどありません。この過激な経済政策によってより多くの第三国に農業経営者がかれらの農地を手放さざる負えない状況に追い込まれています。

一連の貿易協定に反対している多くの発展途上国はこの現実を受け入れるか、世界経済からの隔離かどちらかの選択を迫られています。

世界銀行に多額の借金をしている国々は貿易自由化に大きな不満を抱いています。このうち多くの国々は自然資源の酷使を余儀なくされ貧困層を苦しめる不公平な法案を受け入れざる負えない状況に陥っています。また、これらの国々は輸出中心の経済へと再構築させられています。この再構築によって土地が換金作物(現金収入を目的とした作物)のために開発されたり、その国の鉱業がさらに拡大されると通常その土地の環境や人々に悪影響を及ぼします。輸出品の製造は一国の発展にとって必ずしも必要であるわけではないのです。輸出における世界の市場価格の変動は急に暴落したり、数年間低下し続けたりと激しく変化します、この不安定な市場状態により、タバコやコーヒー、ココア農園において貧困層の人々は空腹と栄養不足に苦しんでいます。

専売特許

発展途上国に住む原住民の人々はは何十万年に渡って代々伝えられ、積み重なれてきた独自の農法を利用してきました。しかし、この貿易協定の規定において、この伝統は合法に失われています。多国籍企業はこの代々蓄積されてきた知識を奪い取りこれらの農法、さらに現地の植物を好きなように利用することが貿易規定で許可されているからです。

一般的な問題

発展途上国における4分の1以上の人々が貧困に苦しんでいます。そして先進国に住む何百万人という人々が貧困ライン以下の生活を余儀なくされています。数十億の人々が未だ1日1ドル以下の生活を送っています。この貿易システムは世界の貧困を縮小できているとは言えません。

貿易自由化において恩恵を受けて人々/団体

  • 多国籍企業
  • 発展途上国
  • 莫大な土地を所有する裕福な地主
  • 情報の入手手段を持っている人々

    貿易自由化において苦しんでいるの人々/団体

  • 発展途上国
  • 商人と労働者
  • 小さな土地を所有する地主
  • 情報の入手手段を持っていない人々

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